部屋のなかを

投稿者:User icon mini casiwi 投稿日:2014/01/22 10:57

さくや、深夜テレビを見ていた。
カミサンがパジャマ姿で離れからやってきた。
カミサンの寝室のある離れと居間とはかなり離れている。
めったなことでは、就寝してから起きだして居間に来ることはない。
リリをだいている。

「どうしたの」とわたしは訊いてみた。

「リリがうるさくてネムレナイノヨ。
枕元をトコトコ歩きまわって、うるさいのよ。
それに下くちびるのあたりが赤くはれているの」
それでリリのことを叱ってしまったというのだ。
どうりで、リリはしょぼんと、うなだれている。
くびをすくめて神妙にしている。
悲しそうでもある。

カミサンからリリを渡された。
たしかに右のアゴの上のほうが赤い。

「リリ、ママをこまらせるなよ。
明日は模擬試験の監督がある。
早くから仕事なんだから、
ママをヤスマセテあげなさい」
リリに話しかけるときは、つい優しい言葉になってしまう。
家に迷いこんで来てからソロソロ一年になる。
手のひらにのっていた子猫はいまはすっかり大人だ。
でもいつになってもわたしの心のなかでは、リリは手のひらサイズだ。

カミサンが悲鳴をあげている。
キッチン、
中道、
畳の部屋、
コタツとピアノのある十畳ほどの板の間をぬけ、
やっと寝室の障子をあける。

カミサンがコウフンシテ指さすユカに10センチを超すムカデがうごめいていた。
赤黒い粘液を床にふりまきまだうごめいていた。
リリが果敢にムカデにたちむかっている。
尻尾を太くして前足でムカデをとらえている。

それで、わかった。

ムカデを追ってリリは部屋のなかをかけずり回っていたのだ。

「リリがいなかったら、
わたしムカデにクワレテいたかも……。
リリがまもってくれた。
わたしをたすけてくれたのよ」

それなのに、怒ったりしてゴメンね。
かみさんの感激ぶりはテンコモリ。
アットウテキナものだった。

下くちびるのハレはムカデにさされたものだった。

まいにち、裏の空き地で虫をとってくる。
「虫ハンター」とわたしに呼ばれているリリのお手柄だった。

「さすが、虫ハンターのリリだ。ミイマを守ってくれてありがとう」


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